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◆乾漆粉について
漆の塊り
画像の物は漆を丼等に保管した時、普通は紙やラップ等を被せて仕舞うのですが、そのままにして置き表面を乾かして、あえて塗膜を作った物を集めた物で、漆のみの塊りです、朱・黒共約3kg有り、大変貴重な物です。何に使うのかと言うと、この塊りを細かく砕いて、乾漆粉と言う物を作ります、乾漆粉は、主に漆を塗った後直ぐに蒔いて、下地に使ったり、そのザラザラ感を活かした塗りに仕上げたりして使います。市販では同じような物で、木粉を芯にして様々な色の塗料を着けた、偽乾漆粉と言う物も有ります。この後、粉にしたら、番手毎にふるいに掛けて使います。


◆錆び土について
錆び土 1
錆び土とは、主に下地作りの時に使う物で、水練りした土に生漆を練り混ぜて、箆着けして下地を作って行きます。地元の沢から採れた土を水簸(すいひ)して、小麦粉のように細かな土にし、持ちやすさや、ゴミや埃が混ざらないように、団子状に丸めて乾燥させた物で、使う時には砕いて使います。下地に使う、砥の粉よりカチンと締まった堅地になりますし、輪島地の粉より扱いやすいので、今でも他の産地で欲しがる材料の一つです。木曽漆器が発展してきた理由の一つに、堅ろうな下地が出来上がる、この錆び土が昔から採れて来たからとも言われています。真職に合わない地道な作業なので、数十年前に採る事を止めてしまい、今では貴重な材料です。同じような物で水練り状態で売られている物が有りますが、まったくの別物で、錆び土と違い粘土質の物なので締まりが良くないです。画像の物は、私が使っている幾つかのさ錆び土で、左から採取者の印が着いている大正時代の物で、粒子も細かく締まりも良いです、真中が昭和20年代で約660gの物で大きいです、右の物は私自身が10年位前に自分で採りに行った土を水簸して作った物で、この中では一番乾きも早くて締りが良いです。


錆び土 2
水練りした錆び土と生漆を練り合わせた物を、「サビ」と言い下地作りに使いますが、画像のように欠損部等を埋めて造形する「傷見(きずみ)」等にも使います。砥の粉等と比べても、角がきっちりと立ち上がり、硬化時間も早くしっかりと硬化するので水研ぎをしても楽です。金継ぎでも、欠損部の補修には、最高の材料です。


錆び土 3
錆び土には他の下地材と比べて、他にも優れている点が有ります。砥の粉より練り合わせる生漆の量が少なくて済み、硬化能力に優れている事、輪島地の粉と比べても練りやすく、サビ着けをする時の箆運びが楽な点等が有りますが、最も優れている点は、針で突付いた様なピンホールも綺麗に埋められる事です。画像の品物には、3個のピンホールが開いていおり、一箇所を埋めた所です、超接写で撮った画像なので大きく見えますが、実際は肉眼でも判らない位のピンホールでした。このように、非常に優れた物ですが、現在は流通していないのが現状です、自分で使うには、まだまだ持合わせが有りますが、何時か又採りに行こうと思っています。


◆惣身粉(そうみこ)について
惣身粉 1
惣身粉とは、下地等の時に使う木粉(きご)を鍋で乾煎りした物で、主に柘植(つげ)や欅粉を用います。椀木地等の本堅下地をして行く場合に使います。生の木粉を鍋で乾煎りして行きますが、遣り過ぎると、火種が出来て炭化してしまいます。微妙なところで火から上げて違う器に移し、その器を冷やさなければならないので、寒い時期でしかも冷やせる雪の有る冬季に行います。逆に言うと、冬季に雪の積もる所じゃないと作りにくい材料です。画像の物は、数年前に作った物で柘植粉です、番手毎に篩いを掛けた物で、使う用途や場所で使い別けます。作った後は、着ている衣類が、まるで火事現場に居たくらいの匂いが染み付くキツイ作業です。


惣身粉 2
他にも、米糊漆と練り合わせコクソ(刻芋)を作り、指し物等の内角にカイマワシをして、綺麗なアールを造形する下地のベースに用いたり、又、欠損部の補充等に使います。コクソを作る場合、生の木粉を使う方が居ますが、私はお勧めしません、生の木粉を使った場合、コクソが硬化していく時沈み込みが大きいですし、長年経つと劣化しやすく、耐久性と言う事では良くないからです。


◆地の粉について
地の粉 1
堅地等の下地をして行く工程で、地の粉を使う事が有ります。錆土と同じ土で錆土より粗い物です、要するに錆土を水簸(すいひ)して作る工程の時に出る、錆土には適さない残りの土です。画像の物は30年位前に採って来た物で、一見すると錆土の様に細かく見えますが、同じ様に水練りしても粘り気も無く非常に粗い物です。錆土が如何に細かく粘りの有る物だと気づかされます。


地の粉 2
採って来たままの土は石や枝等も入っているので、#40〜60の篩いを使って大まかに選別します、その後画像の様に鍋に入れて火にかけ乾煎りします。乾煎りするのは、土の中に有る目に見えない細かな葉や小枝の不純物や、微生物を燃やす為も有りますが、一粒の粒子の中に空洞の部分を作る事で、米糊をまぜた漆との混ぜ合わせが良くなります。


地の粉 3
画像の様に赤くなったら火から下ろし冷まします、その後篩いをかけて、最初の#60を含め#80・#100等の用途別に分けます。輪島地の粉と比べた時、地の粉と米糊をまぜた漆の地漆(じうるし)を使って下地作りをした時、素地に着けて延ばすと、箆運びが素早く伸ばせるので作業性も良く、乾いた時の沈み込みも少なく、しかも締り(硬化)が良いです。又、錆土と混ぜても、仕上げ前の下地としても使えます。私自身、昔は輪島地の粉を使った事が有りましたが、様々な優れた点から、持っていた輪島地の粉は全て必要でなくなり、人に譲りました。この地の粉も門外不出の材料かもしれません。


◆下地錆の作り方
錆土を砕く
団子の様な塊の錆土を、そのままでは使えないので砕きます。量を多く作りたい時は、画像左の様に金物等のボールに入れた錆土を、ハンマー等で叩いて細かくなる様に砕いたり、量が少しの時は、画像右の様に金箆等で削り落しても良いです。因みに、私の場合は、ハンマーで砕いた錆土をタッパに移し、そこに水を入れて馴染ませ、何時でも直ぐに錆を練れる状態にして有ります。


水練
細かく砕いた錆土に水を含ませて良く練ります。この時に水分が多いと、画像左の様な状態になり、このままの状態に生漆を混ぜて練ると、腰の無いベチャッとした錆になります。逆に水分が少ないと、画像右の様な状態になり、このままの状態に生漆を混ぜて練ると、箆で伸ばそうとしても伸びの無い、使い難い錆になります。水分量に関しては経験が必要かもしれません。


生漆との調合
よく水練した錆土に生漆を混ぜ、更に良く練ります。混ぜる生漆の量は錆土100gに対して何グラムなんてデータは有りません、昔からの言い伝えで自分達は覚えました。良く混ぜた錆に箆を押し当て、素早くポンと上へ跳ね上げます、その時画像右の様に、錆に角が立ち、且つ僅か「しな垂れる」感じになればベストです。生漆を混ぜる量が少ないと締りの弱い錆になり、多いと膿んだ錆になります、やはり経験が必要かもしれません。


◆米糊漆と麦糊漆
米糊漆と麦糊漆の違い
漆器作りに於いて、接着を主とした目的に米糊漆と麦糊漆を用います。画像左側が米糊漆で、米糊漆はそのままを使って布を素地に貼り付ける事に使ったり、木粉と混ぜて刻芋(こくそ)を作ったり、地の粉と混ぜて地漆を作る時等に使います。煮たり湯せんして作った米糊と生漆を混ぜて作りますが、厳密に言うと使う用途により、粘土を変えて作った米糊と生漆を練り合わせて使います。画像右側は麦糊うるしで、納豆の糸が引く様に粘着力が有ります。因り接着力を求める時に用い、無農薬の中力粉を使って、市販の接着剤を使いたくない時の木地の接着や、金継ぎ等の時に用います。金継ぎに米糊漆を使う方が居ますが、接着力と言う事では格段に劣り剥離しやすいです、米糊漆を用いた金継ぎは大きな間違いです。又、煮て作った麦糊と生漆を混ぜて麦糊漆を作る方も居ますが、接着力を求める場合、麦粉を煮る事はしません。米糊漆は麦糊漆と比べて、粘土も劣り表面の乾きも遅いので、布貼り等の時の箆着けや運びも楽ですが、適切な厚みに着ければ硬化は早いです。逆に、麦糊漆は粘着力が有り表面の乾きも早いので、布貼り等の箆着けには向いていませんし、表面の乾きが早い割には芯の方の硬化は遅いです。けれども、時間を掛けて乾かす作業には向いていて、しかも硬化力は格段に強いです。夫々の特性を生かし、目的に合った使い方をします。
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