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◆下地の誤魔化し
科学塗料を使って
画像の品物は、元々は摺り仕上げの物でした。総体を摺り直す為に、新たに木地全体の磨きをしたところ、面取りの部分に所々白い感じが残りました。漆で木地堅めをする前の、木地磨きを終えた段階ではよく判らなかったのですが、漆を染み込ませたら判りました。おそらく、ストップシラー等の科学塗料の下地材を使った物と思われます、特に木口の部分は中の方まで浸透しますので顕著に判ります、その様な下地材を使うのは、使う漆の量が少なくて済みますし、当然時間的にも早く仕上がります。漆は塗ってしまうと、下に何を塗って有るか判らなくなって仕舞います、要するに幾らでも誤魔化す事が出来ます、けれども、修理をするとその誤魔化しがハッキリ出てきます。求めるられる方との話しで、予算の関係上「そう言う工程を取ります」と、説明をして仕上げるのなら良いのですが、只自分の利益のみで誤魔化したとしたら、買われた方はそれを知らずに修理するまで使い続けると言う事です。


◆仕上げの手抜き
上塗りでなくタタキ仕上げ
画像は、塗替えを頼まれた角脚座卓の裏側です。漆に牛乳や豆腐・卵の白身等を混ぜて練り合わせると、粘り気の有る漆が出来ます。その漆を薄く延ばしゴムのローラーを数回転がしたり、あるいは箆等で表面をペタペタと叩いて行くと、画像の様にツンツンと漆が立つ感じに仕上がります。一般的には、ダボ漆とかシボ漆、あるいは叩き漆等と言われ、強度の有る事から、お盆等の裏の仕上げ等に用いる事が有ります。只、節等の埃の心配も無いし簡単に早く仕上がる事から、塗り技法としては1ランクも2ランクも下の仕上げ方です。角脚座卓等の裏の仕上げは、一般的には黒の塗り立て仕上げにしますが、お預かりした座卓は叩き仕上げでした。前に作られた方が、塗り立てに自信が無かったのか判りませんが、叩き仕上げだと簡単に早く乾くので、この様に仕上げたのだと推測されます、要するに、この場合は手抜きの仕上げを施したと言えるでしょう。


◆薄利多売
材料と作りの悪さ
画像の入れ子二段弁当箱は、修理の項目に以前掲載した外国製の物で、依頼主より頼まれて、塗り直しをお引き受けした物です。この後、汚れ落としの研ぎをしてみましたが、印の部分等に割れや隙間が有り、中に油分が染みていて、塗り直しをしても、漆が確りと乾かなかったり、再び割れが出てくる事が否めないので、相談のうえ修理をしない事にしました。安価に販売する為か底板は合板(ベニヤ板)です、その為隙間が出来れば必要以上に水分は吸収してしまいます。又、作りの精度の悪さから、曲げ輪の継ぎ手の部分も隙間が有り、同じ様に中の方に浸透してしまいます。大量生産で、安価に販売している物の宿命かもしれませんが、修理をして使って行けるのが漆器の良さで、今叫ばれているエコロジーが、遥か昔から行われている分野です。求める時に、先を読める品物をお求めになった方が、使い捨てでない無駄な出費を押さえるエコに繋がると思いますが・・・。


◆工程の省き
下地の手抜き
修理の塗り替えを頼まれたお椀で、内側にヒビ割れが出ていたので、刃物で浮いている部分を取ってみたところ、下地堅めをしないで漆を塗った為に、下地と漆の密着が悪く次から次と浮いて来てしまいます。下地自体もサビ下地で無く、サフェーサーの下地で、サビ下地と違い硬化が早いので、乾いたら直ぐに研ぎや塗りに掛かれば良いですが、少しでも時間を置くと密着性が悪く、余計に始末が悪いです。


◆下地の強度不足
砥の粉下地
地塗りでなく、下地を施して塗りを重ねる場合、一般的に地の粉を用いた下地作りをします。当木曽でも、サビ土を基本とした下地作りをして、塗りの工程に進みます。画像は修理の品物の剥がれた部分で、砥の粉を使った下地が白く見えています。水練りした砥の粉と、生漆を混ぜて下地材として用いますが、砥の粉は下地として使うには強度と密着性が、地の粉より落ちる事は否めませんので、堅地作りとして使うにはお勧めしません。長年経つと、画像の様にポロポロと剥がれきてしまいますし、強度も劣るので当てた場合も、凹み等の損傷も大きいです。その上、画像の物は下地堅めの作業もしてないので、余計に強度が有りません。砥の粉しか手に入らない方にとって、砥の粉下地をして行く上で、下地堅めは必然の工程です。只、砥の粉下地を作る上で、少し強度を上げる方法が有ります、此処では記載しませんが、興味が有る方はメニューの「お問い合わせ」より、お尋ね下さい。


◆塗装の劣化
科学塗料の行く末
画像は修理でお預かりした箸の様子です。おそらくウレタン系の塗料を、素地に掛けたと思われます、その為剥離の状態になり、所々白く浮いています、ウレタン系の塗料の劣化は思っている以上に激しく、特に白木地に直に塗布した場合は、10年持たないと思います。より密着を高める方法が有りますが、箸のように安価流通させたい場合は、その方法も取らないのかも知れません。今回の場合、販売している方が漆と表記していたら、不当表示販売していた事になりますし、僅かと言えど長年に渡り、ウレタンを食していた事になります。求められる場合、漆塗りなのか科学塗装なのか、確りお尋ねるになる事をお勧め致します。


◆使用目的に合わない技法
真菰下地について
画像は、修理の総塗り替えを頼まれた象刻の丸盆です。以前に、他の業者に修理の塗り替えを頼んだそうで、使用していくうちに、数年で画像のように所々が擦れて木地が出てきたそうです。真菰を下地の一種として用いた場合、洗いを頻繁に行わない物で、枯れた感じに仕上げたい場合等には良いのかも知れませんが、洗いを繰り返す食器等には向かない技法だと思います。お盆等の様な、頻繁に物を載せたり(載せた品物自体が動いて、表面を擦る事が有り)、洗う事や拭く事が有る物には向いてない技法だと思います。


◆耐久性不足
食い先部の処理について
一般的に売られている摺り漆(拭き漆)の箸は、食い先も含め総体が単なる摺り技法で仕上げられています。その為、食い先の先端が擦れて木地が露出し、其のうちに木地が擦れ挙句の果てには画像の様に長さが短くなってきてしまいます。何万回いや何十万回若しくは何百万回は擦る作業に使われるのですから、仕方の無い事かもしれません。けれども、少しでも耐久性を上げる方法もあります、単なる摺り仕上げの物は、作る側としては少しでも安価に提供したい等の理由も有るかもしれませんが、短くなっても修理する事は出来ますでは、初めから短くなってしまう事を認めている様なものです。拘わりを持った箸を作っているなら、お金を頂く以上その点も拘わりを持って箸作りをした方が善いかと思います。言葉は好くないかもしれませんが、使う人の事を考えない自己満足に近い感覚に感じます。


◆使用目的に合わない作り
作り方の手抜き
画像は修理を承った桶です。1回木地堅めの漆掛けを施した状態で写真を撮りました、内側は白木の状態でしたのでその時に撮ればよかったのですが、撮影するのを忘れてしまい少々判り難いかもしれません。底板と側板の部分に隙間が有り、動いた形跡も有ります。依頼主が使用していると、ボタボタと水気が滴り落ちるそうで、修理依頼をお引き受けいたしました。桶は本来水気の物を常に張って置く事で木地が常に膨張し水漏れを塞ぎますが、内側が白木の、この桶の場合も同じ事が言えます。けれども、この桶の場合はその様な使い方をしないので、本来なら側板に切れ込みを入れ、底板を入れ込む様に組んで造形して行くのが適切な作り方だと思います。画像の作りは底板を後から入れ込んだだけの作りで、木の収縮率を考えると隙間が出来るのは容易に判断出来ます。要するにこの場合は使う目的に対応しない、手抜きの作りです。


◆黒目不足
精製に於ける水分過多
画像は修理を承った汁椀ですが、内側は黒塗り仕上げなのに変色しています。たまに同じ様に変色した品物が見受けられる事が有ります。様々な原因が考えられると思いますが、私が考えるには精製の時の黒目不足が原因かと思います。漆精製は92〜97%の水分を抜く事が理想とされています、透き漆は透明度が若干あるので判断し易いですが、黒漆は透明度が殆どないので水分が充分抜けたのか抜けないのはか、判断するのに難しいです。追い込見過ぎると透き漆に比べて乾わかない漆に仕上がる事が多いですし、逆に黒目が足りずに水分量が多い漆で塗った場合に熱い物に耐えきれず、画像の様な変色が起きると思います。稀に透き漆でも黒目が足りない漆を用いた場合にも、同じ様に変色した品物が見受けられますし、生漆の摺りでも同じような現象が見受けられます。精製が足りた漆は食べ物等の熱い物には充分耐えられる塗装です、私自身摺り仕上げの場合でも精製した漆を用います、依り水分の多い生漆は布貼りや下地等にしか適さないと思います。
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