土の採取 1
夏休みの間に、木曾くらしの工芸館の工房を借りて作品作りをしている学生さんが、興味が有ると言う事で、十数年ぶりに、錆土を作る事にしました。09年8月27日に昔に採取していた沢の採れていた場所に行きましたが、すっかり様子が変っていて、木も大きくなっていたり雑草も茂っていました。月日の流れの速さと、活動していない処の荒廃に一抹の寂しさを覚えました。
土の採取 2
雑草が生えている処でも、昔に採取した後と思われる窪地を見つけ、其処を掘って行くと直ぐに粘土質な土が出てきました。昔は、現場の廻りで採取した土をその場所に集めて、ロープーウェーじゃないですが、滑車を使って下の水簸をする場所まで下ろしていました。画像の現場は、防災用に二箇所造られた上の方の堰堤上部です、堰堤が造られた事で土の崩落がなくなり、土の採取効率が悪くなってしまいました。その事が錆土を採取しなくなったもう一つの大きな理由です。
土の乾燥
採取してきた元土を天日乾燥させます。そのまま直ぐに水簸をして行き錆土を作ってしまいますと、出来た錆土にはカビが発生しますし、生漆と練ったサビ自体の硬化も良くなく剥がれやすいです。その為、画像の様にダンボール紙の上に広げ充分天日に当て微生物を殺します。「ブルーシート等でも良いですか?」と、聞かれた事が有りましたが、ダンボール紙だとそれ自体も水分を吸収してくれるので、その点からもダンボール紙の方が優れていると思います、ダンボール紙の意外な使い方の一つです。
水簸
天日干しをした土が充分乾燥したら、桶等に入れ水で攪拌します。有る程度大きな石を取り除いたてからと思うでしょうが、石に付いている僅かな土も、勿体無いのでそのまま入れて洗い落します。その泥水状態ですと、細かな枯れ枝や葉っぱ等が浮きますので、#60の篩いで濾します、完全に浮いているゴミが無くなったら、改めてよく攪拌し10分位置きます。重量の有る重い粒子は早くに沈殿するので、上水のみを次の桶に移します、その工程を攪拌後の置く時間を延ばして行く事で、一辺地〜3辺地と、最後は錆び土と分ける事が出来ます。手持ちに一辺地〜3辺地までが有るので、今回は#60→#80→#125→#180と篩いを通し、一気に細かな泥にしました。画像は通し終えた様子の泥水です。木桶を使うのは、桶自体が水分の揮発をしてくれるので、その点からもお勧めです。
沈殿土の乾燥
#180の篩いを通した泥水を再び攪拌し、15〜20分経った上水を他の桶に出来る限り移します。元の桶の底に溜まった泥を、画像の様にダンボール紙の上に新聞紙を2〜3枚敷き、その泥を均等に流します。新聞紙は水分の吸収力も良いですし、逆に乾燥するのも早いので、最後に僅かに付いている土も、ポロポロと綺麗に集める事が出来ます、新聞紙の意外な活用方です。
団子作り 1
天気の良い時なら30〜40分も経てば、画像の様に剥がす事が出来ます。雪ダルマでは無いですが、そのまま転がす様にして行くと、大きな団子になりますので、時々ハンバーグのパテ作りの様に、空気抜きをします。団子にする必要のない場合は、確りと乾燥させると、表面がパリパリと割れてた状態で乾くので、それを剥がして袋等に入れれば良いです。
団子作り 2
画像は出来た錆土です。大きな4個は約500gです、確りと乾燥するまでは数ヶ月掛かると思います。今回の物は#180の篩いを通した物ですので、少し粗めかもしれませんが、下地に使うには充分使えると思いますし、粗い場合は生漆と練って作ったサビを、細かな布で漉せば、ピンホール等の穴埋めの傷見にも使う事が出来るでしょう。この次は移した上水の桶の泥で作る、完璧な錆土作りです。
完成
画像は今回出来た錆土です。右側4個は完璧な錆土で、約500gが3個と約360gが1個出来ました、十数年前に採取した時は石や枯れ枝等も少なく、バケツで山盛りに2杯とリュック1背負いで40個以上作れた事を思うと、効率の悪さを感じました。只、今回は軽めの採取でしたので、本気で採る気になれば15個前後は作れるのではないかと思います。それと実際に使う時は、乾きは早過ぎる位なので、少し砥ノ粉を混ぜた方が良いので、10個有れば13〜14個分の量に匹敵します。久しぶりの泥遊びで面白かったです。
★平成24年 手(天日)黒目精製の指導
9月16日に透き漆の手黒め精製を指導しました。数年前から付き合いのある、東京芸大卒業のH君とその友達のO君が企画しているものの一環で、現役の学生や興味の有る方が参加されました。機械精製では得られない、艶を抑える方法やどのタイミングで止めるのか等をアドバイスし、漆に全く関係ない方や、市販の機械精製の漆しか扱った事がない学生にとって、生漆から精製漆へと変化して行く工程が、直に見れる良い機会になったのではと思いました。
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